Marginal Notes *4
INTERVIEW
フローデ・フェルハイム
アナと雪の女王《ヴェリィ》
+ ノルウェーの「カントゥス」日本デビュー盤発売!《ヴェリィ》収録。+ フェルハイム氏に寄せられたメッセージと回答を掲載しました
ノルウェーの「カントゥス」日本デビュー盤発売!
ヴェリィ〜魔法の歌声 2014年9月24日発売 カントゥス |
大ヒット映画「アナと雪の女王」の冒頭と、氷の魔法の解けるシーンに響いた魔法の歌声、ノルウェーのア・カペラ・コーラス「カントゥス」の日本デビュー盤です。ノルウェーの民謡や伝統音楽と、現代北欧のセンスが結びついた音楽は、北極圏近くに暮らす人々のココロを伝えます。世界各国のコンクールで優勝する実力派です。
フローデ・フェルハイム作曲《ヴェリィ》(オリジナル・バージョン「大地の歌」)を収録。
《ヴェリィ》の作曲家
フローデ・フェルハイムに寄せられたメッセージ
—どんな時にメロディーが浮かんできますか?ヴェリィのメロディーはとても清楚で透明な感じがします。心が洗われるような気がしました。(いちごべりぃさんより)
—音楽を作る際に、何からインスピレーションを得ますか?(Keiさんより)
フェルハイム:メッセージありがとうございます。ほんとうに多くのことが私のインスピレーションになりますが、一番多いのは自分の生活の中の小さな出来事です。私の部屋の窓から見える森の影だったり、これまで行った場所の思い出だったりします。それと詩のわずかなセンテンスや言葉からもインスパイアされます。
—カトリック聖歌の中でも「うるわしの」が大好きです。Vuelieのもとになる曲としてYoutubeで聴いたとき、鳥肌がたちました。ヨイクと聖歌を融合させたとき、どうしてこの曲だったのか聞かせていただきたいです。(つくしっこさんより)
フェルハイム:私がカントゥスからクリスマス・アルバムのための合唱曲を依頼された時に、思いついたアイデアです。スカンディナヴィアの賛美歌はクリスマスの時期に良く歌われます。原曲の「Deilig er Jorden」は「美しき地球」という意味なので、私はこの曲を同じテーマを持ったサーミの伝統唱法であるヨイクの曲を土台にして表現したいと考えました。だから曲のタイトルである「Eatnemen Vuelie」とは「大地の歌」という意味なのです。
—映画のオープニングに流れるこの曲により、一瞬にして映画の世界の中へあっという間に引きずり込まれ、映画が終わった後も時間が経った今もこの曲と歌声が頭の中に広がります。私は女声コーラスをしていますが、この曲を次回のコンサートに向け挑戦したいと思っています。どんな事を心がけて歌えばこの壮大な世界を表現出来るかヒントを教えて下さい。(Keiさんより)
フェルハイム:この曲を好きになってもらえて、とても嬉しいです。もちろん原曲をじっくり聴いてもらって歌うのもいいですが、あなたの感じるままに歌ってもらってもかまいません。この曲はいろんな歌い方や解釈があっていいと私は思ってます。あなたのやり方でさらに美しいヴァージョンを作ってもいいのです、他の音楽からヒントを見つけてもいいですよ。私はアルトとソプラノ・パートにもっとコントラストをつけるのも面白いのではないかと思います。
—初めて聴いた時から、なぜだか懐かしいようなすがすがしい気持ちになりました。劇場で聴きたくて、三回も映画館に行きました。(lucy vinakaさんより)
フェルハイム:ありがとうございます、トロンハイムにいてあなたのようなメッセージを日本からもらえるのはとても素晴らしいことです。
—今年の冬、最愛の母との永遠の別れがありました。辛くて封印していた行き場のない心が、この曲を聞いてる内に、解けていきました。母に包み込まれたような心地よさ。もう一度母に逢えました。(millさんより)
フェルハイム:お母様のこと、心よりお悔やみ申し上げます。私の曲が少しでもあなたの力になれたことを嬉しく思います、メッセージを伝えてくれてありがとうございました。これからの幸せお祈りいたします。
フローデ・フェルハイム来日公演決定
http://www.harmony-fields.com/a-ff/index.html
東京公演 12月17日(水) 武蔵野スイングホール
大阪公演 12月23日(火・祝) すばるホール プラネタリウム室
滋賀公演 12月25日(木) ひこね市文化プラザ メッセホール
フローデ・フェルハイムによる北欧の伝統唱法ヨイクや伝統曲によるコンサート。
ゲスト・ミュージシャンに山羊の角笛を演奏するトランペット奏者ヒルデグン・オイセットを迎え、クリスマスに相応しい北欧サウンドをお届けします。
ディズニー映画『アナと雪の女王』のオープニングシーンに流れる、印象的なコーラス曲《Vuelie/ヴェリィ》は、もうお聴きになりましたか?
北欧の広く透き通った空を思わせるような、重なりあう美しいハーモニー。喜びに満ち溢れたメロディ。歌とも掛け声とも聞こえるこの曲は、ノルウェーからロシアにかけて居住するサーミ民族に古くから伝わる「ヨイク」という伝統音楽がベースになっています。
この《ヴェリィ》を作曲したのは、フローデ・フェルハイム(Frode Fjellheim)というノルウェーの作曲家。彼は自身のルーツである「ヨイク」と、デンマークの賛美歌《主イエスはいと麗し(Dejlig er jorden/Fairest Lord Jesus)》(B・S・インゲマン作曲)とを融合させ、新しいスタイルの合唱曲を生み出しました。《ヴェリィ》をはじめ、彼のいくつかの合唱曲の楽譜はブージー・アンド・ホークスより出版されています。
これまで日本ではあまり紹介されることのなかった作曲家、ミュージシャンである彼にこの美しい合唱曲がどのように生まれたのか話を聞いてみました。
2014年5月2日|Eメールによるインタビュー
聞き手:ショット・ミュージック
–––生年月日と生まれた場所を教えて頂けますか?
フェルハイム:私は1959年8月27日、ノルウェーの中央にあるモシェエンという街の生まれです。でもモシェエンで育ったわけではなく、ノルウェー南西部のガウスダルという小さな村と北東部のカラショークという村で育ちました。
–––音楽についての教育は受けましたか? 子供時代はどんな音楽を聴いていたのかなど、あなたの音楽的な歴史を教えてください。
フェルハイム:私の両親は二人とも教師で、また音楽がとても好きでした。ですから彼らは私が5歳の時にピアノを買ってくれましたし、ごく幼い頃に何度かピアノのレッスンを受けたこともあります。しかしその後私たち家族は非常に小さい村に引っ越してしまい、ピアノの先生を探すことができなかったので、ほとんど独学でピアノを練習していました。
17歳の時にはじめてバンドを組みビートルズやローリング・ストーンズなどのロックやポップスを演奏するようになりましたが、クラシック・ピアノもずっと続けていました。その頃は、時折レッスンを受けたり、自分でただ弾いていたり、という感じでしたが、カラショークに住んでいた時期に出会った音楽の先生にしっかりと音楽を勉強することを勧められ、トロンハイム音楽院に1980年に入学しました。 そこでクラシック音楽とノルウェーの伝統音楽を学びました。
10代のころはポップス、ロック、ジャズそれにクラシック、いろいろな音楽が好きでしたが、バンド解散後のマンフレッド・マンやジャン・ミッシェル・ジャールといったシンセ・プレイヤーもたくさん聴いていて、彼らの音楽が、私をキーボードの世界へと導いてくれたのです。
–––その後どのようにしてミュージシャン、作曲家としてのキャリアをスタートしたのですか?
フェルハイム:1984年に音楽院を卒業してすぐにトロンハイムの劇場で作曲家、ミュージシャンとして仕事を始めました。そこでの数年間はミュージカルの演奏や指揮、編曲の仕事をして、最後にはいくつかの芝居のための音楽を書きました。
私はこれまでバンド「トランスヨイク」など、自分自身のプロジェクトを中心に作曲してきましたが、合唱曲やさまざまな編成のアンサンブルもたくさん作っています。最近では、大編成で自分のアイデアを形にしたいと思い、オーケストラのための音楽も作っています。また、テレビ番組のための音楽もたくさん書いていますし、数は多くありませんが映画のための音楽も手がけています。
–––あなたの音楽はノルウェーのサーミ人の伝統的な音楽がベースにあると感じます。サーミの伝統音楽はあなたの音楽にどのような影響を与えてきたのですか?
フェルハイム:私の父はレーロース(Røros、南サーミ地方)近郊出身のサーミ人なのです。レーロースはディズニーの『アナと雪の女王』の舞台のモデルになったところです。
この私のルーツは、音楽院で伝統音楽を学んだ後の私を、自然と伝統的なヨイクへ導いてくれました。私はこれまで、先祖の古い音楽についての物語を探し、収集するために何度もレーロースを訪れています。
–––そうだったんですね、『アナと雪の女王』のオープニング曲である「Vuelie/ヴェリィ」というタイトルの意味を教えてもらえますか?
フェルハイム:「Vuelie/ヴェリィ」とはレーロースのある南サーミ地方の言葉で「ヨイク(歌)」という意味です。
–––ヨイクで歌われるのは明確な意味のある歌詞ではなく、もっと古代のいまは失われた物語であると聞きました。それはサーミの神話や叙事詩のようなものなのですか?
フェルハイム:ヨイクというのは私たちサーミの民族の感情や考えを表現する伝統的な方法ですが、言葉によるコミュニケーションをぐっと広げる役割を担っていて、公共の場と私的な場の両方において日常生活の中で使われていたものです。われわれは伝統的に、人を、動物を、山やその他あらゆるものを、ヨイクを通して表現することができました。最近ではこの伝統は日常生活ではなく、(他の多くの伝統がそうであるように)舞台や録音の中で聴かれることが普通になりました。ですから、ヨイクが伝統的なものであるとはいっても、実際にはコンサートやCDのような今の聴き手に適合させた、より現代的に変えられたものを、今日私たちはヨイクとして耳にしているのです。
私はずっと、ヨイクの伝統から抽出された要素を様々な方法で使うことを試みてきました。確かに、伝統的なヨイクの歌手に私の音楽を歌ってもらったことはありますが、ヨイクのさまざまな要素を、新しい音楽の中に組み込んで表現することを、私はいつも目指しています。
–––私はあなたのプロジェクトとソロ・アルバムなど4枚のアルバムを聴きました。どれも非常に落ち着いていて宗教的とも言える神聖な印象を持ちました。どのようなテーマのアルバムだったのか説明して頂けますか?
フェルハイム:『Aejilies Gaaltije』 (2004年にリリースされたノルウェーやフィンランドのフォーク・ミュージックをテーマにしたソロ・アルバム)と『Biejjien Vuelie』(Aejlies Gaaltijeと同様のテーマで作られた2013年のソロ・アルバム)は、はっきりと教会音楽を意識して作りました。もしかすると、これは1960年代から70年代にかけてヨイクを禁じ、多くのサーミ文化を消し去ろうとした西欧のキリスト教会に対する、無言の抵抗だったのかもしれません。
また『Sangen vi glemte』(1991年リリースのアルバム)と『Saajve Dans』 (1994年リリースのJazzjoik Ensemble名義のアルバム)は、人々が忘れかけたヨイクを素材にしたアルバムです。
これらのアルバムのリリース後、「トランスヨイク」というバンドを結成し、さらに現代の文脈でヨイクの要素を発展させる活動を続けていました。
–––なるほど、一方で『アナと雪の女王』に収録された「ヴェリィ」からは上記のプロジェクトとはちょっと違った印象、北欧の大地で生活する人々の喜びのようなものを感じました。この曲はどのようにして作られたのですか?
フェルハイム:この曲はもともと、ヨイクと北欧の賛美歌とを融合させた《Eatnemen Vuelie (=大地の歌)》というタイトルの合唱曲でした。『アナと雪の女王』の映画で使われているヴァージョンは、この映画のサウンド・トラックを担当しているクリストフ・ベックとの共作で、ソプラノのメロディに手を入れ、賛美歌の歌詞を外しました。このことで、ヨイクの影響が明確になり、映画にもよりふさわしいものになりました。
この映画版は、変更しようのない箇所でオリジナル版とかなり共通する部分は確かにありますが、演奏した合唱団のサウンドがこのヴァージョンを固有のものにしてくれました。映画でこの作品を歌ってくれたノルウェーの女声合唱団「カントゥス」のサウンドが、私はとても気に入っています。
Eatnemen Vuelie/大地の歌
Vuelie オリジナル版
作曲:フローデ・フェルハイム
演奏:Cantus/カントゥス
–––私はトランスヨイクのパフォーマンスをYouTubeで見ました。ジャズ、ロック、ダンス・ミュージックの要素が混在していて、とてもユニークだと思いました。トランスヨイクについて教えてもらえますか?
フェルハイム:トランスヨイクは、ヨイクの未来の姿を探求するというテーマを持っていて、最初の私のアルバムよりさらに先へ進んだ、より現代的なサウンド・スケープを探求しています。そして時にはまったく別の伝統音楽を取り入れたり、ゲスト・ミュージシャンを迎えたりしながら、より実験的なトライをしています。その多くはライヴでの共演という形をとりますが、カッワリー(イランからアフガニスタン、南アジアの伝統的な宗教音楽)の歌手であるシャー・ミアンダット・カーン(Sher Miandad Khan)とは一緒にCDを作りました。最近彼と一緒にノルウェーをライブ・ツアーしましたよ。
トランスヨイクもそうですが、私のプロジェクトは、ヨイクを音楽の中心になるようなレベルにまで引き上げることに取り組んでいます。ヨイクは、エスニックな西欧音楽を作るための単なる「トッピング」としてではなく、新しい音楽を作る上で核となり、出発点になるのです。この考えは私の本とワークショップのタイトルである『スタート地点としてのヨイク(Med joik som utgangspunkt)』の土台にもなっています。ヨイクという方法を用いて、人々に新たな音楽の探求をはじめて欲しいのです。
–––これまで多くのシンガーへの楽曲提供やプロデュースをされていますが、その中で代表的なものや、あなた自身が特に気に入っているものを教えてください。
フェルハイム:これまで最も多く仕事をしたのがウッラ・ピルティヤルヴィ(Ulla Pirttijarvi)で、彼女のアルバムを3枚プロデュースしています。また彼女も私の何枚かのソロ・アルバムに参加してくれています。中でも私が好きなのは2008年にリリースされた『Aibbaseabmi』です。
ほかにアンネ・ヴァーダ(Anne Vada)というノルウェーのシンガーの最新アルバム『Det evige Sekund』のオープニング曲を作曲しました。今年の秋に発売予定の彼女のアルバムにも楽曲を提供しています。
–––『アナと雪の女王』は世界的なヒット作となっていて、ここ日本でもいくつかの記録を塗り替えています。これからのあなたの活動は大きく注目されていると思いますが、今後の予定などを教えてください。
フェルハイム:私はこの映画の大成功に本当に驚いています、また『アナと雪の女王』のようなプロジェクトに参加できて心から名誉なことだと思います。多くのアイデアがあるのですが、今決まっているのはアンネ・ヴァーダの新作への楽曲提供と私自身のソロ・アルバムの制作です。それと『アナと雪の女王』で「ヴェリィ」を歌ったコーラス・グループ「カントゥス(Cuntus)」のニュー・アルバムの制作も予定しています。今後はヴォーカリストやシンガーのための作曲が増えていくと思います。
–––ありがとうございます、最後に日本のファンへメッセージを頂けますか?
フェルハイム:私は2009年に東京と大阪で演奏するという幸運な機会を頂きました、近い将来再び日本を旅して、素晴らしい人々と再会したいと思っています。
Eatnemen Vuelie/大地の歌
『アナと雪の女王』
Vuelie/ヴェリィ オリジナル版
フローデ・フェルハイム
Eatnemen Vuelie/大地の歌
Vuelie/ヴェリィ オリジナル版
高声4部合唱(SSAA)、シンセサイザー、パーカッションのための
BHI 5402427
Boosey & Hawkes
アナと雪の女王 オリジナル・サウンドトラック
日本版 デラックス・エディション(2014)
V.A.
iTunes
Norwegian Voices (2011)
Cuntus
カントゥス
iTunes
Aejlies Gaaltije - The Sacred Source (2004)
Frode Fjellheim
フローデ・フェルハイム
iTunes
Biejjien vuelie - Solkvad (2013)
Frode Fjellheim
フローデ・フェルハイム
iTunes
Aibbaseabmi (2008)
Ulla Pirttijarvi
ウッラ・ピルッティヤルヴィ
iTunes
Det evige sekund (2009)
Anne Vada
アンネ・ヴァーダ
iTunes