細川俊夫古希記念コンサート50年のうつろひ

BBVA Foundation Frontiers of Knowledge Award「音楽とオペラ部門」受賞を祝して

世界で高く評価をされる日本を代表する作曲家 細川俊夫の生誕70年の古希と、またスペインのノーベル賞とも評され過去にはP.ブーレーズ、H.ラッヘンマン、S.シャリーノ、S.ライヒ、G.クルターク、G.アペルギス、S.グヴァイドゥーリナ、K.サーリアホ、T.アデスなど、錚々たるメンバーが名を連ねる権威あるBBVA Foundation Frontiers of Knowledge Award「音楽とオペラ部門」受賞を祝し、細川作品の演奏に精通した音楽家が集まり演奏会を開催します。

「細川俊夫 古希記念コンサート 50年のうつろひ」によせて

柿木伸之

今年の8月に新国立劇場で世界初演を迎える細川俊夫のオペラ《ナターシャ》には、細川の半世紀に及ぶ音楽創造が凝縮されている。初演に出演するサクソフォン奏者大石将紀をはじめとする音楽家がその二か月後に開催する演奏会「50年のうつろひ」では、このオペラに至る細川の創造の歩みが、1978年に書かれたヴァイオリン独奏のための《ウィンター・バード》からたどられる。フルート独奏のための《線I》をはじめ、空間と時間のカリグラフィーとして展開する音楽の方向を示した作品が取り上げられるのも意義深い。

今回の演奏会では大石、上野由恵、毛利文香、大田智美といった細川の音楽に通暁する音楽家の挑戦によって、ベルリン時代からの細川の音楽が、その起筆から新たに展開するにちがいない。細川の音楽創造は、書からの霊感を基に、東洋の文化を背景に持つ者にこそ可能な仕方で独特の世界を切り開いてきた。また、《ナターシャ》にも示されるように、現代の困難に向き合いながら、魂の救済の途も探ってきた。「50年のうつろひ」において、10月に古希を迎える細川の音楽の粋がその可能性において響くことが期待される。

公演概要

公演名
細川俊夫古希記念コンサート50年のうつろひ BBVA Foundation Frontiers of Knowledge Award「音楽とオペラ部門」受賞を祝して
日時/会場
開演
ゲーテ・インスティトゥート東京(東京都港区赤坂7-5-56)
チケット
一般 4,000円 / U-25 2,000円(消費税込)※当日はそれぞれ500円増し
出演者
ヴァイオリン
毛利文香
アコーディオン
大田智美
フルート
上野由恵
サクソフォン
大石将紀
打楽器
国立音楽大学 打楽器アンサンブル
堀田明杏、川﨑友仁、髙山菜桜、田中健太、藤生愛菜、簗瀬喬介
指揮
キハラ良尚
音響
有馬純寿
プログラム
  • 作品名
    ウィンター・バード
    作曲年
    1978
    編成
    無伴奏ヴァイオリンのための
    ヴァイオリン
    毛利文香
  • 作品名
    メロディア
    作曲年
    1979
    編成
    アコーディオンソロのための
    アコーディオン
    大田智美
  • 作品名
    線 I
    作曲年
    1984/86
    編成
    フルートのための
    フルート
    上野由恵
  • 作品名
    時の深みへ
    作曲年
    1994/2025
    編成
    サクソフォンとアコーディオンのための
    サクソフォン版世界初演
    サクソフォン
    大石将紀
    アコーディオン
    大田智美
  • 作品名
    エクスタシス(脱自)
    作曲年
    2016/2020
    編成
    ヴァイオリンのための
    ヴァイオリン
    毛利文香
  • 作品名
    スペル・ソング ―呪文のうた―
    作曲年
    2014-2015
    編成
    大石将紀によるソプラノ・サクソフォン編
    サクソフォン
    大石将紀
  • 作品名
    祈雨
    作曲年
    2018
    編成
    6人の打楽器奏者のための
    打楽器
    国立音楽大学 打楽器アンサンブル
    堀田明杏、川﨑友仁、髙山菜桜、田中健太、藤生愛菜、簗瀬喬介
    指揮
    キハラ良尚
クレジット
主催
細川俊夫古希記念コンサート実行委員会
協力
ゲーテ・インスティトゥート東京、ショット・ミュージック株式会社

作曲家細川俊夫Toshio Hosokawa

1955年広島生まれ。80年、ダルムシュタット国際現代音楽夏期講習に参加し作品を発表。以降、ヨーロッパと日本を中心に作曲活動を展開。欧米の主要なオーケストラ、音楽祭、歌劇場等から次々と委嘱を受け、高い評価を得る。オペラ《班女》(2004年、エクサン・プロヴァンス音楽祭)、オーケストラ作品《循環する海》(05年、ザルツブルク音楽祭)、ロシュ・コミッション受賞による委嘱作、オーケストラのための《夢を織る》(10年)、オペラ《松風》(11年、モネ劇場)、ベルリン・フィル、バービカン・センター、コンセルトヘボウ共同委嘱《ホルン協奏曲─開花の時─》といった作品は、大野和士、準・メルクル、ケント・ナガノ、サイモン・ラトル、フランツ・ウェルザー=メストらの指揮者により初演される。13年ザルツブルク音楽祭では同音楽祭委嘱によるソプラノとオーケストラのための《嘆き》をはじめ多くの作品が演奏された。16年、東日本大震災後の福島をテーマとしたオペラ『海、静かな海』(ハンブルク州立歌劇場)初演。17年にはアンサンブル・アンテルコンタンポラン委嘱のオペラ《二人静─海から来た少女─》がパリのシテ・ドゥ・ラ・ミュジークで初演。18年、オペラ《地震・夢》(シュトゥットガルト州立歌劇場)初演。01年にベルリン芸術アカデミー会員に選出。東京交響楽団、ベルリン・ドイツ交響楽団、西ドイツ放送局合唱団、ネーデルラント・フィル、モーツァルト・フェスティバル(ヴュルツブルク)のコンポーザー・イン・レジデンスを歴任。06/07年および08/09年、ベルリン高等研究所フェローとしてベルリンに滞在。12年、バイエルン芸術アカデミー会員に選出。紫綬褒章受章。18年度国際交流基金賞、21年ゲーテ・メダル受賞、25年第17回Frontiers of Knowledge賞(音楽・オペラ部門)受賞。現在、武生国際音楽祭音楽監督。20/21年〜、広島交響楽団のコンポーザー・イン・レジデンス。

直近の公演

作曲家
細川俊夫
作品名
ナターシャ
編成
オペラ(1幕 プロローグと7場)
オペラ台本(日本語、ドイツ語、ウクライナ語ほかによる多言語)
多和田葉子
世界初演
会場
新国立劇場東京
日時
2025年8月11日[月・祝]14:00/13日[水]14:00/15日[金]18:30/17日[日]14:00
URL
https://cms.nntt.jac.go.jp/opera/natasha/

BBVA Foundation Frontiers of Knowledge Award「音楽とオペラ部門」

この賞はスペインの「ノーベル賞」とも言われる栄誉ある賞であり、科学や人文科学など8つの分野で多大な貢献をした人物に贈られる。「音楽とオペラ部門」のこれまでの受賞者には、ピエール・ブーレーズ、ヘルムート・ラッヘンマン、サルヴァトーレ・シャリーノ、スティーヴ・ライヒ、ジェルジュ・クルターク、ジョルジュ・アペルギス、ソフィア・グヴァイドゥーリナ、カイヤ・サーリアホ、トーマス・アデスなど、錚々たるメンバーが名を連ねている。

発表に際して、細川氏の「作品の並外れた国際的な影響力」と、その創作活動によって「日本の音楽の伝統と現代の西洋の美学の間に橋を架けた」ことが高く評価されている。

第17回 受賞者一覧(BBVA Foundation)
https://www.frontiersofknowledgeawards-fbbva.es/
スピーチ等(日本語有り/BBVA Foundation)
https://www.frontiersofknowledgeawards-fbbva.es/galardonados/toshio-hosokawa-2/