細川俊夫の新曲《時の花》8月23日にルツェルン音楽祭で児玉桃らにより世界初演
細川俊夫の新作、クラリネット、ヴァイオリン、チェロ、ピアノのための《時の花 -オリヴィエ・メシアンへのオマージュ-》(欧文タイトル“Stunden-Blumen -hommage a Olivier Messiaen-”)が、ルツェルン音楽祭期間中の8月23日にルツェルンの聖ルカ教会で世界初演される。児玉桃とルツェルン音楽祭による共同委嘱。イエルク・ヴィトマンのクラリネット、カロリン・ヴィトマンのヴァイオリン、クサヴィエ・フィリップスのチェロ、児玉桃のピアノによる演奏。
オリヴィエ・メシアンの生誕100年を記念するコンサートで、メシアンの《幻想曲》《世の終わりのための四重奏曲》とともに演奏される。
作曲者によるプログラム・ノート
私は、ここ数年、「花」をテーマにした音楽を書き続けている。弦楽四重奏のための《沈黙の花》、混声合唱と打楽器のための《蓮の花》、弦楽四重奏のための《開花》、ピアノとオーケストラのための《月夜の蓮》等は、それぞれ花の姿を音楽的に表現しようとしたものである。「花」への関心は、私の生まれ育った家に「生け花」の伝統があったことや、私の愛する日本の伝統詩歌に「花」を歌ったものが多いことによる。まだつぼみであった音楽的な原形が、ゆっくりと静かに「歌」へと開花していく。私は「花の心」を音楽にしてみたい。それは、私が私のオリジナルな歌をうたうことへの願いであり、内なる音楽的な開花への願いでもある。
メシアンの《世の終わりのための四重奏曲》と同じ編成で、という児玉桃のアイディアによってこの音楽は生まれた。「桃」という日本の花の名は、ミヒャエル・エンデの『モモ』を想起させ、この四重奏曲のタイトル「Stunden-Blumen」はその本の重要な一章の題名でもある。「世の終わり」に対して、「時の始まり」「時の始原」を暗示するような音楽を生み出したかった。母胎となる一音の持続の内から、陰陽が生まれ、ハーモニーが生まれ、その緊張の内から「音の花」、「歌」が生まれていく。
この作品を児玉桃に捧げる。