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ジョナサン・ハーヴェイ逝去 73歳

2012年 12月 7日付

©Maurice Foxall

 作曲家ジョナサン・ハーヴェイ(Jonathan Harvey)が12月4日、英国のルイスにて亡くなりました。享年73歳。

 ハーヴェイは1939年イギリスのウォリックシャー州生まれ。聖歌隊員の後ケンブリッジ大学セント・ジョーンズ・カレッジを経て、ケンブリッジ大学とグラスゴー大学で博士号を取得。ベンジャミン・ブリテンの勧めによりエルヴィン・シュタインとハンス・ケラーにも師事しました。

 1980年代にブーレーズに招かれIRCAM(フランス国立音響音楽研究所)で創作活動を行い、代表作となるアンサンブルとエレクトロニクスのための《バクティ》(1982)や、テープ音楽《モルトゥオス・プランゴ、ヴィヴォス・ヴォコ》(1980)などを作曲しました。

 ハーヴェイは《弦楽四重奏曲》第1番?第4番、9人の奏者とエレクトロニクスのための《Soleil Noir/Chitra》(1995)、5人の奏者のための《光の死/死の光》(1998)といった小編成作品をはじめ、室内オーケストラのための《トランクイル・アビディング》(1998)、ソプラノと大オーケストラのための《ホワイト・アズ・ジャスミン》(1999)、2006年にサイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団によって演奏された、オーケストラ、シンセサイザー、エレクトロニクスのための《冬と春のマドンナ》(1986)などの大編成作品、BBCプロムスのために書かれた合唱とエレクトロニクスのためのカンタータ《Mothers shall not Cry》(2000)、これまでに20回を超える再演が行われている教会オペラ《受難と復活》(1981)、英国国立歌劇場の委嘱により94年モネ劇場でマーク・エルダー指揮により初演されたオペラ《Inquest of Love》(1992)など、様々なジャンルの作品を書きました。

 ネーデルラント・オペラの委嘱によりIRCAMで制作され、2007年ルクセンブルク大劇場で初演されたオペラ《ワーグナーの夢》(2006)は大絶賛され、これまでにマーティン・ブラビンズ指揮BBC交響楽団によってコンサート形式で演奏されたほか、2013年にウェールズ国立歌劇場にてニコラス・コロン指揮での上演が予定されています。

近年では、2005?08年にBBCスコットランド交響楽団のコンポーザー・イン・アソシエーションを務め、大オーケストラのための《...towards a pure land》(2005)、オーケストラのための《ボディ・マンダラ》(2006)、オーケストラとエレクトロニクスのための《スピーキングス》(2008)の3作品を発表。2008年には混声合唱とオーケストラのための《Messages》(2007)がラインベルト・デ・レーウ指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン放送合唱団によって初演されました。

 2011年10月には、ハンス・キュングのテキストを用いた、オーケストラ、合唱、児童合唱のための《Weltethos》(2009-11)がサイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団によってベルリンで初演。同作品は今年6月にバーミンガム市交響楽団の演奏でカルチュアル・オリンピア・フェスティヴァルの開会を飾った後、10月にもロンドン・サウスバンク・センターにおいて同交響楽団によって再演されました。

 今年1月バービカンで開催されたBBC『Total Immersion』フェスティヴァルでは、《ワーグナーの夢》のコンサート形式英国初演を含む彼の多くの主要作品を特集され、70歳を超えてなお名実ともに時代を牽引する国際的作曲家として高い評価を得ていました。

 日本においても、1998年にサントリー芸術財団『サマーフェスティバル』で《打楽器協奏曲》(1997)が日本初演、2010年には同フェスティヴァルのテーマ作曲家として、2夜にわたってそれぞれ室内楽とオーケストラ作品が特集されました。山本千鶴(ヴァイオリン)、クヮトロ・ピアチェーリ、ジルベール・ヌノ(エレクトロニクス)、東京シンフォニエッタ、板倉康明(指揮)の演奏によって、15楽器のための《スリンガラ・シャコンヌ》(2009)、12人の奏者とCDのための《隠された声 2》(1999)、ヴァイオリンと9人の奏者のための《シェーナ》(1992)、《弦楽四重奏曲第4番》(2003)が日本初演されたほか、《ボディ・マンダラ》日本初演、サントリーホール委嘱によるオーケストラのための《80ブレス・フォー・トーキョー》(2010)の世界初演が沼尻竜典指揮東京フィルハーモニー交響楽団によって行われました。

晩年の数年間は深刻な病に苦しみながらも、クラリネット独奏のための《Cirrus Light》(2012)、セント・ジョーンズ・カレッジの委嘱による無伴奏合唱のための《受胎告知》などを作曲しました。

ハーヴェイの作品は現在、ムジークファブリークアンサンブル・モデルンアンテルコンタンポランASKOアンサンブル・イクトゥスなどをはじめとする同時代の一流アンサンブルによって広く演奏されています。これまでに100を超える録音がCDでリリースされているほか、著書には『Music and Inspiration』(『インスピレーション 音楽家の天啓』吉田幸弘訳/春秋社)があります。

2009年、ベルリン高等研究所の研究員及び、イギリスのハダースフィールド現代音楽祭のコンポーザ・イン・レジデンス。サウスハンプトン、サセックス、ブリストル、バーミンガム、ハダースフィールドの各大学から名誉博士号を贈られ、欧州アカデミーメンバー。1993年にブリテン作曲賞受賞。2007年にギガヘルツ賞受賞。2009年《スピーキングス》でモナコ・ピエール皇太子作曲賞受賞、同年アカデミー・シャルル・クロの共和国大統領賞受賞。2012年《Messages》でロイヤル・フィルハーモニック・ソサエティ音楽賞を受賞しました。

ほとんどの作品はイギリスのフェイバー・ミュージック(Faber Music)から出版されています。