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細川俊夫《巫女》世界初演

2013年 3月 1日付

細川俊夫の新作、3台のアコーディオンのための《巫女》が、3月9日に浜離宮朝日ホールで行なわれる「御喜美江アコーディオン・ワークス2013」において世界初演されます。演奏は御喜美江、大田智美、ヘイディ・ウオスイェルヴィ。

今回でシリーズ第21回を迎える「御喜美江アコーディオン・ワークス2013」。全6曲のプログラム中4曲が世界初演、または日本初演という意欲的なプログラムのなかでの初演に期待が高まります。


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©Kaz Ishikawa

細川俊夫
巫女
3台のアコーディオンのための

委嘱:御喜美江
演奏時間:10分


御喜美江さんとの出会いで最初のアコーディオン曲『メロディア』を作曲したのは1978年から1979年にかけてである。私はまだベルリン留学中でユン・イサンの生徒であった。幸いなことにこの23歳で書いた『メロディア』は、それ以降の30年間で、アコーディオン奏者のレパートリーとして定着し、今でも頻繁に演奏されている。この作品は日本の笙をイメージしたと、作曲当時のプログラムノートに書いたが、実際には笙のことはほとんど知らなかった。私が笙奏者、宮田まゆみさんに出会ったのは1985年のことであり、そのときに初めて笙という楽器を深く知ることになった。笙と雅楽との出会いは、私の音楽に決定的な影響を与えたが、それを深く知らないうちにも無意識に私の感性は、アコーディオンに笙の響きを聴いていたのである。

その作品から33年が経過した後、私は再び御喜美江さんのために、今度は3台のアコーディオンのために作曲することになった。『メロディア』で無意識のうちにイメージしたこの楽器を笙の『スーパーインストゥルメント』ととらえるアイディアは、この作品でより深く浸透している。第1奏者が巫女、そしてその背景の2つの楽器はその巫女の背景の宇宙であり、自然であると捉えようとした。神話的でコスモロジーを孕んだ音楽。

音楽は、私たちの内に隠された宇宙的な見えない力を、音によって表現するのだ。その音を生み出し、宇宙の奥底の流れと結びつける媒介としての演奏家は、私にとってシャーマン(巫女)である。御喜美江さんは、アコーディオンという楽器で、私たちの内に隠された神秘の力を伝えてくれる「巫女」であるに違いない。「MI-KO」という題名は、MIE+AKKO(Akkordeon, アコーディオンのドイツ語綴りから)の文字の連想から生み出された。

笙的な音の堆積がメロディーを形成してゆく。その場合、必ず光と影、男と女、上昇と下降、高と低という二つの異なった性格の要素が、互いを殺し合うことなく、互いに補い合うことで一つの音宇宙を形成する『陰陽』の考え方を、この作品の中心原理とした。最後には、混沌とした低音群から浄化された世界が形成され、音楽は祈るように消えてゆく。

長い間の友情で私を支えてくれた御喜美江さんにこの作品を捧げる。

細川俊夫

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御喜美江アコーディオン・ワークス2013
2013年3月9日(土)14:00開演
浜離宮朝日ホール
http://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/event/2013/03/event1183.html
御喜美江、大田智美、ヘイディ・ウオスイェルヴィ(アコーディオン)