WERGOから新リリース 細川俊夫の弦楽四重奏作品 & ヘンツェの交響作品
ドイツのWERGOレーベルから、『細川俊夫:沈黙の花 ? 弦楽四重奏作品集』[WER 67612]と、『ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ:交響曲第1番&第6番』[WER 67242]の、2つのアルバムがリリースされました。
アルディッティ弦楽四重奏団の演奏による『細川俊夫:沈黙の花 ? 弦楽四重奏作品集』には、表題作《沈黙の花》(1998)をはじめ、《原像》(1980)、《開花》(2006-07/2009)、《花の妖精》(2003)、《ランドスケープ Ⅰ》(1992)、そして今回が初録音となる《書(カリグラフィー)―弦楽四重奏のための6つの小品―》(2007/2009)の6作品が収められています。
現代音楽における最高峰のアンサンブルの一つである同団は、細川と深い信頼関係を長年にわたって築いており、《ランドスケープI》《沈黙の花》の世界初演をはじめ、数多くの細川作品が彼らによって世界各国で演奏されています。最近では、エディンバラ国際音楽祭、広島のHappy New Earにおける演奏は記憶に新しいところです。
最初期から近年までの弦楽四重奏のための作品を集めたこのアルバムでは、作曲家細川俊夫の作風の変遷と、一貫する美学を、存分に聴き取ることができるでしょう。録音はすべて、昨年2月にバーデン=バーデン(ドイツ)の、ハンス・ロスバウト・スタジオで行われました。
マレク・ヤノフスキ指揮、ベルリン放送交響楽団の演奏による『ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ:交響曲第1番&第6番』には、室内オーケストラのための《交響曲第1番》(1947/1963, rev.1991)と、2つのオーケストラのための《交響曲第6番》(1969, rev.1994)が収録されています。録音は昨年6月と8月、ベルリンにて。
ヘンツェが20歳で作曲し、作曲家自ら「完全な失敗」と後に語ったオリジナル版《交響曲第1番》は、その後の交響曲第2番から第5番の作曲経験を基に、第2楽章を除いて、ほとんど再作曲ともいえる改作が施されました。2つの複調的和音による動機と、それを元とする素材が展開される第2楽章では、オリジナル版の時点で既に、ヘンツェの持ち味といえる単純かつ澄んだ表現を見ることができます。1、3楽章では12音技法の影響が色濃く現れています。
《交響曲第6番》は1969年に作曲され、同年ハバナで世界初演が行われました。ダルムシュタットに代表される当時の欧州前衛音楽からではなく、キューバに生きる黒人音楽の新しい技法から着想されたと作曲家が強調するこの作品は、エレクトリック・ギターやハモンド・オルガンなどの「非オーケストラ楽器」を含む2つのオーケストラが相互に作用しながら展開します。カラフルで、けたたましく、攻撃的な響きのなかに、ヘンツェがこの作品で試みた多様性の衝突を聴き取ることができるでしょう。