細川俊夫《ダンス・イマジネール》10月22日に東京で世界初演
細川俊夫の新作、オーケストラのための《ダンス・イマジネール》が、10月22日、サントリーホールで、下野竜也指揮読売日本交響楽団により世界初演される。読売日本交響楽団の設立45周年記念委嘱作品。
演奏会の詳細(読売日本交響楽団ウェブサイト):
http://yomikyo.yomiuri.co.jp/season/2007/subscription.htm
〈プラグラム・ノート〉
この作品は、読売日本交響楽団の45周年記念の委嘱作品として2007年に作曲し、同交響楽団に捧げた。
私のこれまでの作品には、ダンスをテーマにした作品がいくつかある。《セレモニアル・ダンス》(弦楽オーケストラ)、《スロー・ダンス》(室内アンサンブル)、《スロー・モーション》(アコーディオン)等は、いずれも日本の舞をテーマにした音楽である。西洋のダンス、バレーは、地球の重力から自由になろうと、ダンサーがステップを踏んで飛んだり、走ったりするのに対して、日本の舞は、すり足で腰を沈め、地球の重力に沿って、ゆるやかな旋回動作を基礎とする。その動きが次第にスピードを上げ、身体と魂は開放感(エクスタシー)を体験する。
この音楽の発想の根源には、日本の能舞、雅楽の舞等が私のイメージにあったが、結局は私の「想像上のダンス」ということで、《ダンス・イマジネール》(danses imaginaires)という題名を付けた。
20世紀後半の西洋音楽の創作は、知的な操作が多く介入することによって、音楽が本来持っていた身体性や、身体と宇宙との交感(ハーモニー)を失ってしまったように思う。音を生み出す人間の身体には、宇宙的な感性が深く宿っており、その宇宙的な感性を音楽によって呼び覚ますことが、これからの新しい音楽の役割ではないだろうか。
また近年、様々なコンテンポラリーダンサーとの共同作業を続けてきた。ベルギーのダンスカンパニー、ローザスのアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル(私のオペラ《班女》の演出家)や、ベルリンのサッシャ・ヴァルツ(将来、タンツテアターを共同で創る予定)、イタリアのルカ・ヴェジェッティ(私の音楽によってたくさんのダンスを生み出してきた)たちとの個人的な交流が、私に西洋のダンスとは異なった、私の身体感覚に沿ったダンス音楽を考えることになった。この《ダンス・イマジネール》は、こうした西洋の新しいダンスを生み出している人たちによって、実際に振り付けされて、舞われることも可能な音楽である。《春の祭典》や《火の鳥》が、ダンス音楽であると共に、コンサート音楽として聴くことも可能であるように。
細川俊夫