サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ テーマ作曲家〈細川俊夫〉
サントリー芸術財団の主催により毎年夏に東京のサントリーホールで開かれる現代音楽コンサートシリーズ「サマーフェスティバル」。フェスティバルの中心企画である今回の国際作曲委嘱シリーズでは、細川俊夫をテーマ作曲家として、細川の管弦楽と室内楽の作品を特集する2つの公演が行われます。
9月5日の管弦楽公演では、ヘルマン・ヘッセの詩に着想を得て作曲された新作トランペット協奏曲《霧の中で》(2013)と、オペラ《松風》から〈序〉と、〈第4場〉のアリアを取り出し、楽器編成を変えて再構成された《松風のアリア ーオペラ『松風』よりー》(2013)の、2つの世界初演が行われます。
《霧の中で》の独奏を務めるジェロエン・ベルヴェルツは、北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団の首席トランペット奏者、ストックホルム・チェンバー・ブラスの一員として活躍し、ソリストとしてもバロックから現代作品、ジャズまでをレパートリーにもつ名手です。2005年には細川俊夫《旅 Ⅶ》の世界初演を手がけました。《松風のアリア》では、2011年のオペラ初演から幾度となく松風役を歌ってきたバーバラ・ハンニガンが独唱を務めます。近年オペラを中心に世界中の一流劇場で高い人気と賞賛を得ているハンニガンが、その表現力と存在感を遺憾無く発揮してくれることでしょう。
この日のコンサートで東京フィルハーモニー交響楽団を指揮するのは、これまでにも数多くの細川作品を手がけ、細川が深い信頼を寄せる準・メルクル。ほかに、フランチェスコ・フィリデイ作曲によるチェロとオーケストラのための《全ての愛の身振り》(チェロ独奏:多井智紀)と、ハンニガンによる過剰に滑稽かつ驚異的な演奏(演技)が期待されるジェルジ・リゲティ《ミステリーズ・オブ・ザ・マカーブル》の2曲が、細川の選曲によってプログラムされています。
先立って9月3日に行われる室内楽公演では、ディオティマ弦楽四重奏団によって細川の弦楽四重奏作品が一挙演奏されます。プログラムは、去る5月イタリアで同四重奏団によって世界初演が行われた《遠い声》(2013)の日本初演をはじめ、細川25歳の時の作品《弦楽四重奏曲「原像」》(1980)、《書(カリグラフィー)》(2007/2009)、《開花》(2006-07/2009)、《沈黙の花》(1998)の5作品。同四重奏団は細川作品の演奏に定評があり、昨年リリースされた細川の弦楽四重奏作品集(NEOS 11072)でも素晴らしい録音を残しています。曲目、演奏ともに、大変密度の高いコンサートとなるでしょう。
サントリーホール国際作曲委嘱シリーズは1986年に武満徹の提唱によって始められ、1999年に監修を湯浅譲二に引き継ぎ、これまでに、ヤニス・クセナキス、尹伊桑、ルイジ・ノーノ、オリヴァー・ナッセン、ヘルムート・ラッヘンマン、ヴィンコ・グロボカール、サルヴァトーレ・シャリーノ、ジョナサン・ハーヴェイといった、同時代の第一線で活躍する作曲家へ管弦楽作品を委嘱し、その世界初演を行ってきました。細川俊夫は今年から3年間、同シリーズの監修者に就任します。
[関連演奏会]
9月2日 19:00 サントリーホール 大ホール
権代敦彦《秋(とき)》オーケストラのための[世界初演]
杉山洋一(指揮) 東京都交響楽団
サントリー芸術財団 サマーフェスティバル2013
池辺晋一郎がひらく「ジャズ、エレキ、そして古稀」
池辺晋一郎・小出稚子・権代敦彦・猿谷紀郎・新実徳英・西村朗・野平一郎による新作管弦楽