細川俊夫《昇華》チェロとオーケストラのための 2017年エリザベート王妃国際音楽コンクール本選課題曲
© Kaz ishikawa
ブリュッセルのパレ・デ・ボザールで、5月29日から6日間にわたってエリザベート王妃国際音楽コンクールの本選が行われ、細川俊夫作曲による課題曲、チェロとオーケストラのための《昇華 Sublimation》が、12名のファイナリストによって演奏された。管弦楽はステファヌ・ドゥネーヴ指揮ブリュッセル・フィルハーモニック。
チェロとオーケストラのための《昇華》(2016)はエリザベート王妃国際音楽コンクールの委嘱により、同コンクール史上初のチェロ部門開催となった2017年の本選課題曲として作曲された。演奏時間は約12分。
独奏パートではスル・ポンティチェロ、ヴィブラート、ポルタメント、装飾音符などの、旋律の流れや勢い、また音色の微細な変化に関わる指示が数多く現れ、声明のような緩やかな抑揚と、細川が「毛筆の書(カリグラフィー)」に喩える流動的で予測し難い音響が表現される。オーケストラの音響はときに共鳴、ときに反発するように独奏に呼応し、やがて独奏の音が、オーケストラの響きのなかへ柔らかく溶けるようにして終曲となる。細川の他の協奏作品と同様に本作でも、独奏が「人」、オーケストラが人の内外に拡がる「自然・宇宙」として性格付けらている。
「私は、表現したいという強い自意識のうたが、自然の大きな響きのうちに昇華され,エゴが溶けてゆく過程を、音楽で表現したいと願っている。」― 細川俊夫
コンクール規定に則り、課題曲《昇華》の楽譜は本選の1週間前になって初めてファイナリストに開示された。本選では課題曲と自由曲(既存の協奏曲)の2曲の演奏が課せられ、審査員長アリエ・ヴァン・リズベス以下16名による審査の結果、第1位はヴィクトル・ジュリアン=ラフェリエール(フランス)に決定した。岡本侑也(日本)は第2位。12名の演奏の模様はコンクールの公式ウェブサイトでライヴ・ストリーミング放送されたほか、録音と録画がアーカイヴ公開されている。
細川俊夫
昇華
チェロとオーケストラのための
Toshio Hosokawa: Sublimation for violoncello and orchestra
世界初演
エリザベート王妃国際音楽コンクール 2017〈チェロ〉本選
2017年5月29日〜6月3日 パレ・デ・ボザール(ブリュッセル、ベルギー)
チェロ独奏(演奏順):
Sihao He,Brannon Cho,Yan Levionnois,Aurélien Pascal,Maciej Kułakowski,Seungmin Kang,JeongHyoun (Christine) Lee,岡本侑也,Bruno Philippe,Santiago Cañón-Valencia,Victor Julien-Laferrière,Ivan Karizna
ステファヌ・ドゥネーヴ(指揮)
ブリュッセル・フィルハーモニック
http://cmireb.be/