コンポージアム2020:トーマス・アデスの音楽
photo © Brian Voce
東京オペラシティ文化財団の同時代音楽企画「コンポージアム2020」のテーマ作曲家、トーマス・アデスのオーケストラ作品を特集する演奏会が1月15日に行われる(昨年5月の公演が今年1月に延期されての開催となる)。演奏会では、アデスの《ポラリス(北極星)》の日本初演を含む3作品が、沼尻竜典の指揮、東京フィルハーモニー交響楽団によって演奏される。(当初出演を予定していたアデスは、新型コロナウイルスによる入国制限で来日できなくなり、変更を余儀なくされた。)
イギリスの現代作曲家トーマス・アデス Thomas Adès(1971〜)の《ポラリス(北極星) Polaris》(2010)は、アメリカのニュー・ワールド・センター(フランク・ゲーリー設計)のオープニングのために委嘱され、マイケル・ティルソン・トーマスの指揮、ニュー・ワールド交響楽団によって、2011年1月同センターで世界初演された。
《ポラリス(北極星)》は、その周囲を他の衛星が回る北極星のように、軸音へと終始引き寄せられ、回帰しながら反復される金管グループによる持続的なカノンと、それに呼応し、重なり合うように奏でられる管弦楽グループによって、音楽が循環的に展開していく。副題の「オーケストラのための旅」は、こうした音楽的なモティーフの性格が、さながら航海のツールである方位磁針になぞらえられていることに由来する。
《ヴァイオリン協奏曲「同心軌道」 Violin Concerto "Concentric Paths" 》(2005)は「輪」「道」「円」の題名をもつ全3楽章からなる作品で、いずれも循環的な形式を持ち、同心円の中心となるのは第2楽章「道」である。ヴァイオリンと管弦楽の織りなす対話が聴きどころになるだろう。ヴァイオリン独奏は、当初予定されていたリーラ・ジョセフォウィッツに代わり、成田達輝が演奏する。
大オーケストラのための《アサイラ Asyla》(1997)は、弱冠26歳の時に書かれたアデスの出世作で、サイモン・ラトルの指揮、バーミンガム市交響楽団によって世界初演された。特に第3楽章に見られるクラブ・ダンスミュージックやミニマルの要素が色濃く反映された同作は、誰もが求める安全な場所(自分の家やコンサートホール)をイメージして作曲された作品である。コロナ禍にある現在の私たちに何らかの心の救済を与えてくれるかもしれない。
トーマス・アデス Thomas Adès
ポラリス(北極星)
オーケストラのための
Polaris for orchestra
【日本初演】
アサイラ
大オーケストラのための
Asyla for large orchestra
ヴァイオリン協奏曲「同心軌道」
Violin Concerto "Concentric Paths"
成田達輝(ヴァイオリン) 沼尻竜典(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団
2021年1月15日[金]19:00 東京オペラシティ コンサートホール
https://www.operacity.jp/concert/compo/2020/schedule/200528.php