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新刊楽譜:細川俊夫《小さな花》《喪失》《私は心静かに、その時を待つ》

2022年 12月 28日付

細川俊夫/Toshio Hosokawa

photo © Kaz Ishikawa

細川俊夫作曲、《小さな花》《喪失》《私は心静かに、その時を待つ》の演奏用楽譜が、ショット・ミュージックの新刊として発売された。


ホルンのための《小さな花》(2011)は、作曲家の友人で、ルツェルン音楽祭の音楽監督ミヒャエル・ヘフリガー氏の50歳の誕生日を祝う作品として作曲され、2011年5月6日、スペイン・ビルバオのグッゲンハイム美術館で、シュテファン・ドーアにより初演された。演奏時間は5分。

細川がドーアのために作曲した《ホルン協奏曲-開花の時-》のホルン独奏パートからモチーフが取られている。協奏曲と同様に、つぼみから静かに開花する蓮の花の生命の姿を描いた小品。


ピアノのための《喪失》(2019)は、3分ほどの短い小品。2020年3月3日、ウィーン楽友協会で、ベートーヴェン演奏の大家として知られるオーストリアのピアニスト、ルドルフ・ブッフビンダーによって世界初演された。

ブッフビンダーが2019年に契約を結んだドイツ・グラモフォンとの初めての録音となる「ディアベリ・プロジェクト」のために、フィリップ・マヌリ、タン・ドゥン、クリスティアン・ヨストイェルク・ヴィトマンヨハネス=マリア・シュタウトなど、現在活躍中のそれぞれの年代を代表する11人の作曲家に、ベートーヴェンの《ディアベリの主題による変奏曲》に基づく作品が委嘱され、新録音として発売。ベートーヴェン生誕250年の記念年にふさわしい、画期的なプロジェクトとなった。

作曲家によると、タイトルである《喪失》は、シューマンの《初めての喪失》に由来する。できるだけ音の数を切り詰め、ひとつひとつの音の響きの美しさを追求した作品となっている。

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細川俊夫《喪失》世界初演(2020年 2月 28日付)

イングリッシュ・ホルンのための《私は心静かに、その時を待つ》(2019)は、ユンゲ・カンマーフィルハーモニー・ベルリンによる委嘱作品で、マーラーの《大地の歌》をテーマとする彼らのプロジェクトのために、《大地の歌》にまつわる独奏曲を依頼された。

《大地の歌》はマーラーの東洋的な音楽世界が表現されており、特に、最終楽章の〈告別 Abschied〉は人がこの世とあの世の境界を行き来する様が深く表現されているとして、細川にとって西洋音楽の中で最も重要な作品のひとつである、と細川は述べている。古代中国の哲学思想を拠り所とし、音楽をこの世とあの世を結ぶ媒介、演奏家を2つの世界を結ぶシャーマンと捉えて作曲を行う細川にとって、《大地の歌》は原点のような作品と言えるだろう。

また、音楽を時間と空間へのカリグラフィーであると考えている細川にとって、イングリッシュ・ホルンは細川の描く毛筆的な音の線を表現するのにふさわしい楽器と捉えられている。作品には、〈告別〉において特徴的な、オーボエの旋回するモチーフが多用されている。

2019年10月9日、ベルリンで、ドミニク・ヴォレンヴェーバーの独奏により世界初演された。演奏時間は5分。