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オリヴァー・ナッセン逝去

2018年 7月13日付

© Maurice Foxall


作曲家・指揮者、オリヴァー・ナッセンが今月8日、66歳で亡くなりました。《交響曲第3番》、オペラ《かいじゅうたちのいるところ》、《花火と華麗な吹奏》などの作品で知られ、欧米のみならず日本でも人気を博しました。2001年の東京オペラシティ「コンポージアム2001」では、ナッセンの室内楽作品とオーケストラ作品が特集され、《かいじゅうたちのいるところ》上映会も催されました。

指揮者としては、親交の深かった武満徹の作品も数多く手がけ、2016年10月に東京オペラシティで行われた「没後20年 武満徹 オーケストラ・コンサート」で東京フィルハーモニー交響楽団を指揮したことも記憶に新しいでしょう。また同月には石川県立音楽堂でオーケストラ・アンサンブル金沢を指揮し、自作《レクイエム – スーのための歌》の日本初演を行っています。日本のオーケストラにしばしば客演し、今年9月にも東京交響楽団の演奏会を指揮する予定でした。

以下は、ナッセンの作品を数多く出版している英フェイバー・ミュージック社の追悼記事です(日本語訳:ショット・ミュージック)


フェイバー・ミュージックは、40年以上に渡り仕事を共にした愛する作曲家、オリヴァー・ナッセンに、深く哀悼を意を捧げます。

ナッセンは世界も最も著名で影響力のある作曲家・指揮者の1人であり、透徹として、複雑で、豊穣をたたえた作品群を残しています。彼がイギリスと世界の音楽界に与えた影響は並はずれたもので、それは音楽という芸術に対する尽きることのない愛情と深い知識を示すだけでなく、彼が音楽家として非常に寛大であったことと、彼の好奇心の大きさを示すものです。

1952年に生まれたナッセンは、ロンドンでジョン・ランバートに、タングルウッドでガンサー・シュラーに作曲を学びました。彼はわずか15歳の時に最初の交響曲(後に自身でロンドン交響楽団を指揮して初演)を作曲し、指揮者マイケル・ティルソン・トーマスに献呈された《交響曲第3番》(1973-9)はいまや20世紀のクラシックとして広く知られています。《オフィーリアのダンス Ophelia Dances》(セルゲイ・クーセヴィツキー生誕100周年委嘱作品、1975)や《コージング Coursing》(1979)を含む、まばゆいばかりのアンサンブル作品の数々は、ナッセンをイギリスの同時代の音楽の最先端に位置づけています。

ナッセンは1980年代に、ファンタジー・オペラ2部作《かいじゅうたちのいるところ Where the Wild Things Are》(1979/83)と《ヒグレッティ・ピグレッティ・ポップ! Higglety Pigglety Pop!》(1984-5, 1999改訂)を絵本作家のモーリス・センダックと共同で創作しました。グラインドボーン音楽祭によって初制作されたこの2作品は、広くヨーロッパとアメリカの両方で上演され、CDやヴィデオに収録されています。

演奏会のオープニングにふさわしい、沸き立つような《花火と華麗な吹奏 Flourish with Fireworks》(1988)は、彼のホルンやヴァイオリンのための協奏曲がそうであったように、瞬く間にオーケストラのスタンダード・レパートリーとなりました。2002年にピンカス・ズーカーマン(ヴァイオリン)とピッツバーグ交響楽団のために作曲された《ヴァイオリン協奏曲》は、バレンボイム、ドゥダメル、エッシェンバッハ、サロネンらの指揮によって世界中で100回近く演奏されています。近作には、ピアノのための《オフィーリア、最後の踊り Ophelia’s Last Dance》(2010)、ヴァイオリンとピアノのための《反射 Reflection》(2016)、ソプラノ、フルート、アンサンブルのための《おお、ホトトギス!― ジャポニズムの断章 O Hototogisu! – fragment of a Japonisme》(2017)などが挙げられます。彼の60歳の誕生日を記念した多くのイベントのひとつとして、2012年にバービカン・センターで行われたBBC交響楽団の「Total Immersion」ではナッセンの音楽が特集されました。

世界的に主要な作曲家・指揮者の1人として、ナッセンは同時代の音楽をあらゆる方面に渡って、絶え間なく紹介し、支援する活動を行ってきたことで知られています。彼は数多くの録音を行い、また、エリオット・カーター、ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ、ジュリアン・アンダーソンらの重要な作品を含む数々の初演を手がけました。2009年にロイヤル・フィルハーモニック協会の指揮者賞を受賞したほか、BBC交響楽団のアーティスト・イン・アソシエーション(2009-14)、ロンドン・シンフォニエッタの音楽監督(1998-2002)、タングルウッド音楽センター現代音楽部門長(1986-93)、バーミンガム・コンテンポラリー・ミュージック・グループのアーティスト・イン・アソシエーションを歴任しました。1983年から1998年までオールドバラ音楽祭の芸術監督を務め、1992年には、ブリテン=ピアーズ財団プログラムにおける現代音楽の作曲と演奏コースをコリン・マシューズとの協働で設立しました。

ナッセンはサフォークのスネイプ村に暮らしました。1994年に大英帝国勲章(CBE)を叙勲。つい先日、ロンドンの王立音楽院でナッセンは名誉博士号を授与されたばかりですが、そこでは2014年に初のリチャード・ロドニー・ベネット音楽教授に就任。アイヴァー・ノヴェロ賞クラシック音楽部門、ISM Distinguished Musician Award、2015年にクイーンズ・メダル・フォア・ミュージックなど、他にも多数の賞を受賞。今年始め、バーゼルのパウル・ザッハー財団がナッセンの自筆稿を収蔵しました。

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以上、フェイバー・ミュージックの記事より翻訳
原文:http://www.fabermusic.com/news/oliver-knussen-1952201809072018-1