サントリーホール サマーフェスティバル2018 テーマ作曲家にイェルク・ヴィトマン
©Marco Borggreve
サントリーホールが主催する現代音楽の祭典、「サマーフェスティバル」が8月22日から9月1日にかけて、今年もサントリーホールで開催される。「国際作曲委嘱シリーズ」「ザ・プロデューサー・シリーズ」「芥川作曲賞選考演奏会」の3つのプロジェクトを軸に、全7日におよぶ公演が予定されている。
細川俊夫が監修する「国際作曲委嘱シリーズ」では、作曲家・クラリネット奏者・指揮者として第一線で国際的に活躍する、イェルク・ヴィトマン Jörg Widmann(1973-)をテーマ作曲家に迎え、2つの演奏会でその作品を特集する。8月25日の室内楽演奏会では、《ミューズの涙》(cl., vn., pno.,1993/96)、《エア》(hn.,2005)、《3つの影の踊り》(cl.,2013)、《狩の四重奏曲(弦楽四重奏曲第3番)》(2003)、《『エチュード』第1巻(第1〜3曲)》(vn.,1995/2001/02)、《五重奏曲》(ob., cl., bsn., hn., pno.,2006)の6作品が演奏される。ヴィトマンは、古典的な調性をも含む欧州音楽の豊かな共通言語を柔軟に使いこなし、作品ごとにその表現は多岐にわたる。さまざまな切り口で楽しむことができるプログラムだろう。
31日の管弦楽演奏会では、ベートーヴェンの交響曲へのオマージュである《コン・ブリオ ― オーケストラのための演奏会用序曲》(2008)に加え、サントリーホール委嘱新作《ヴァイオリン協奏曲第2番》の世界初演が行われる。妹のカロリン・ヴィトマン(ヴァイオリン)と共に様々な新しい響きを見出すための試みを重ねてきた、と語るヴィトマンの新作は、リズミカルかつ超絶技巧的な音楽になるようだ。また、私淑するカール・マリア・フォン・ウェーバーの《クラリネット協奏曲第1番》と、作曲の弟子であるヤン・エスラ・クールの新作が演奏され、これらの管弦楽作品に挟まれるようにしてヴィトマン作曲、クラリネット独奏のための《幻想曲》(1993/2011)もプログラミングされている。
両日とも、クラリネット独奏および指揮をヴィトマン、ヴァイオリン独奏をカロリン・ヴィトマンがそれぞれ務める。管弦楽は東京都交響楽団。室内楽演奏会では、キハラ良尚(ピアノ)、福川伸陽(ホルン)、吉井瑞穂(オーボエ)、小山莉絵(ファゴット)、辺見康孝、亀井庸州、安田貴裕、多井智紀(以上、弦楽四重奏)が出演する。
ピアニスト・作曲家・指揮者の野平一郎が企画する「ザ・プロデューサー・シリーズ」では、野平のオペラ《亡命》世界初演が行われるほか、「フランス音楽回顧展」と題し、27日と9月1日の2回にわたって、20世紀フランスの重要作品を特集する。なかでも、1日に演奏されるピエール・ブーレーズの最重要作品、ソプラノとオーケストラのための《プリ・スロン・プリ ― マラルメの肖像》は聴き逃すことのできないプログラムだろう。浜田理恵(ソプラノ)と、ピエール=アンドレ・ヴァラド指揮東京交響楽団が演奏する。
26日の「芥川作曲賞選考演奏会」では、昨年6月のN響「Music Tomorrow 2017」で世界初演が行われた、岸野末利加作曲《シェイズ・オブ・オーカー》(2017)が、坂田直樹、久保哲朗の作品と並ぶ候補作品として演奏される。演奏は、杉山洋一指揮、新日本フィルハーモニー交響楽団による。
サントリーホール
サマーフェスティバル2018
https://www.suntory.co.jp/suntoryhall/feature/summer2018/