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武生国際音楽祭2018 ブラームスから21世紀音楽の新しい地平へ

2018年 8月 1日付

© Kaz ishikawa


作曲家・細川俊夫が音楽監督、ピアニスト・伊藤恵がコンサートプロデューサーを務める「武生国際音楽祭」が、今年も福井県の越前市文化センターを中心に9月9日から1週間にわたって開催される。国内外から実力ある演奏家や作曲家が集い、クラシックからコンテンポラリーまで多彩なプログラムによるコンサートのほか、作曲ワークショップ、夏季アカデミー(演奏家マスタークラス)が開かれる。

同音楽祭は今年で29回目の開催となる。地方都市で国際音楽祭を企画することの困難の中で、毎年充実した音楽祭を目指し、地域一体となっての開催を継続してきた。昨年10月には同音楽祭への出演も多い日本のソリスト達が「武生アンサンブル」としてヴェネツィア・ビエンナーレの細川俊夫ポートレート・コンサートに出演。海外の音楽シーンにも着実に「武生」の名は知られ始めているだろう。

今年の音楽祭は「ブラームスから21世紀音楽の新しい地平へ」をテーマとして掲げ、ブラームスやシューマンなどのロマン派から、メシアン、シェルシ、リゲティ、シャリーノといった現代作品、そして作曲ワークショップの講師も務めるヨハネス・マリア・シュタウト、ベッティーナ・スクリプチャク、ディアナ・ロタルといった同時代の作曲家たちの作品がプログラミングされている。

現代の作品に特化した演奏会として、14日の「細川俊夫と仲間たち」公演では、細川作曲の2作品:《ゲジーネ》《レテ(忘却)の水》、シュタウト作曲の4作品:《シドナム・ミュージック》《水紋》《トニー・クラッグのための「カルデラ」》《Wheat, not oats, dear. I'm afraid.》に加え、ロタル作品の世界初演、スクリプチャク作品の日本初演が行われる。また、3回に渡る「新しい地平 I〜III」公演では、招待作曲家であるチャールズ・クォン、クリス・ウィリアムズ 、リナ・トニア、坂田直樹ら、新進気鋭の作曲家による新作の初演が目白押しだ。細川《3つの愛のうた》も演奏される。

イエルーン・ベルワルツ(トランペット)がブラームス《トランペットまたはホルンのための12の練習曲》を演奏する16日の「モーニングコンサート」では、細川、トニア、坂田、木下正道の4人が同作に着想を得てそれぞれトランペットのために作曲したエチュードが演奏される。細川によるトランペットのための《エチュード》は、ベルワルツによって今年6月にドイツで世界初演が行われた。またベルワルツは9月10日、水戸芸術館でクリスチャン・シュミット(オルガン)と共に行うデュオ・リサイタルのなかで本作の日本初演を行う。

新しい現代作品のみならず、クラシカルな室内楽を高水準の演奏で聴くことができるのもこの音楽祭の特色だろう。10、11日の3つの公演では、ブラームス、シューマン、メンデルスゾーンの室内楽作品が特集される。なかでも特に注目すべきは、若くして世界各地の一流オーケストラや指揮者と共演を重ね絶賛されるセルゲ・ツィンマーマン(ヴァイオリン)が、ブラームス《ヴァイオリン・ソナタ第2番、第3番》と《ピアノ五重奏曲》で伊藤恵(ピアノ)と共演する11日のリサイタルだろう。

また、ルツェルン芸術祭、エディンバラ芸術祭、ウィーン・コンツェルトハウスなど、各地の主要な音楽祭や劇場で活躍し、明瞭かつ繊細な歌唱で国際的に高く評価されているイェリー・スー(ソプラノ)が4つの演奏会に出演。北村朋幹(ピアノ)との共演で、シューベルト、ブラームス、シューマン、リヒャルト・シュトラウスの歌曲を披露する。スーは、クラシック作品から現代作品までの広く演奏しており、ヴォルフガンク・リームのオペラ《三人の女》世界初演(2009)や、細川《嘆き》韓国初演(2017)なども手がけた。

また武生国際音楽祭プレイベントとして、8月26日に北の庄クラシックス(福井市)、9月4日に同仁キリスト教会(東京都文京区)(※)で、それぞれ演奏会が開かれる。26日、辺見康孝(ヴァイオリン)のソロ・リサイタルでは、細川《呪文》とベリオ《セクエンツァ VIII》などが演奏される。4日の演奏会には山本純子(ピアノ)と鈴木俊哉(リコーダー)が出演し、ピアノのための《エチュード》全6曲、リコーダーのための《線 I b》といった細川作品のほか、スクリプチャクらの作品が演奏される。

※9月4日・同仁キリスト教会で予定されていた山本純子氏の演奏会は延期となりました(2018年9月3日追記)


武生国際音楽祭2018
2018年9月9日(日)〜16日(日) 越前市文化センター(福井)ほか
音楽監督:細川俊夫/コンサートプロデューサー:伊藤恵
http://takefu-imf.com/