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ベンジャミン《リトゥン・オン・スキン》 日本初演

2019年 6月 28日付

George Benjamin

photo © Matthew Lloyd

サントリーホールが主催する現代音楽の祭典、「サマーフェスティバル」が8月23日から31日にかけて、今年もサントリーホールで開催される。「国際作曲委嘱シリーズ」「ザ・プロデューサー・シリーズ」「芥川作曲賞選考演奏会」の3つのプロジェクトを軸に、全7日におよぶ公演が予定されている。

「ザ・プロデューサー・シリーズ 大野和士がひらく」では、8月28、29日に、イギリスの作曲家ジョージ・ベンジャミンのオペラ《リトゥン・オン・スキン》が大野和士の指揮、東京都交響楽団ほかによって日本初演される。

2012年7月、フランスのエクサン・プロヴァンス音楽祭で、ジョージ・ベンジャミン自身の指揮、マーラー・チェンバー・オーケストラによって、3幕のオペラ《リトゥン・オン・スキン》(2012)が世界初演され、これまでに20以上のオペラ・ハウスで上演されてきた。本作は数々の賞を受賞した傑作オペラとして知られ、今夏の上演が待望の日本初演となる。

共同でオペラ制作できる優れた台本作家を長年にわたって探してきたと語るベンジャミンが、共通の友人を通して出会ったのがマーティン・クリンプだった。これまで3作あるベンジャミンのオペラは、いずれもクリンプとのコラボレーションから生まれたものである。ベンジャミンとクリンプによる最初のオペラは《Into the Little Hill》(2006、同年世界初演)で、《リトゥン・オン・スキン》は2作目にあたる。昨年10月には3作目となるオペラ《Lessons in Love and Violence》(2017)が世界初演され、DVD(2019、Opus Arte)がリリースされたばかりである。

リトゥン・オン・スキン》は、プロテクター(裕福な城主)とその従順な妻、プロテクターから装飾写本を依頼された少年の3人をめぐって錯綜する、悲劇的で残酷な心理ドラマである。クリンプの台本はイタリア・ルネサンスの詩人ボッカッチョ『デカメロン』に基づくものだが、この物語の起源は中世フランスの吟遊詩人トルバドゥールの詩の世界に遡る。従順な妻の予期せぬ不貞と反抗に直面した夫が少年の心臓を料理して妻に食べさせるという残酷なストーリーを、ベンジャミンとクリンプは一面的な愛憎劇として描くのではなく、人間の存在と肉体の死というより普遍的なテーマへと昇華させることに成功している。同時に、このオペラには、女性の生きる条件、自立や自由というフェミニスト的な解釈を読み取ることもでき、中世の古い題材に今の時代にも通じる現代性が与えられていると言えるだろう。

ベンジャミンは、このオペラのドラマトゥルギーの本質は構造にあり、オペラ全体の統一感と強度は、クリンプのテクストとベンジャミンの音楽の緻密な構造に裏づけられている、と述べている。また、この両者のバランスに関して、400ページ以上に及ぶ音楽は常に饒舌であるわけではなく、テクストとのコントラストを考慮して響きの濃淡をつけたとも語っている。

今回の日本初演では、サントリーホールを生かしたセミ・ステージ形式で上演される。本公演のプロデューサーである大野が、ヨーロッパを中心に活躍する針生康(舞台総合美術)、そして声楽陣と共に、どのような舞台を作り上げるのか注目が集まる。

サントリーホール
サマーフェスティバル2019

ジョージ・ベンジャミン
リトゥン・オン・スキン(2012)
オペラ(3幕)(英語上演、日本語字幕付き)
George Benjamin: Written On Skin
日本初演
2019年8月28日[水]、29日[木]19:00開演 サントリーホール
アンドルー・シュレーダー(バリトン)、スザンヌ・エルマーク(ソプラノ)、藤木大地(カウンターテナー)、小林由佳(メゾ・ソプラノ)、ジョン・健・ヌッツォ(テノール)、大野和士(指揮)、東京都交響楽団
https://www.suntory.co.jp/suntoryhall/feature/summer2019/producer_opera.html