photo © Kaz Ishikawa

11月28日にサントリーホールで行われる「サントリー芸術財団50周年記念 サントリーホール 作曲家の個展 II 2019 細川俊夫＆望月京」において、細川俊夫の《渦》が、杉山洋一指揮、東京都交響楽団によって世界初演される。

オーケストラのための《渦》は、サントリーホール、ソチ・冬の国際芸術祭、エッセン・フィルハーモニーの共同委嘱による作品で、細川の盟友、準・メルクルの還暦を祝って作曲された。

細川は、笙の音楽に深く影響を受けていると常々語っている。笙は奏者がゆっくりと息を吐き、また吸うことにより発音する。細川によると、吐いては吸うを繰り返すうちに円を描くような時間が生じ、それが微妙にずれながら反復されることにより、螺旋状の渦を巻くような時間が生起するという。《渦》では、オーケストラは舞台上の左右と中央、そして客席側の2つのバンダと5群に分かれて配置され、聴衆を螺旋状の渦に包み込んでいく。

「作曲家の個展 II 2019」では、細川のオルガン協奏曲《抱擁―光と影―》も日本初演される。《抱擁》は、バンベルク交響楽団、ケルン・フィルハーモニー、フィルハーモニー・ルクセンブルク、ウィーン・コンツェルトハウスが、エルンスト・フォン・ジーメンス音楽財団の助成を得て共同委嘱を行った作品で、2017年にヤクブ・フルシャ指揮、バンベルク交響楽団により初演された。今回、世界初演時のソリストであるクリスチャン・シュミットが来日し、日本初演のソリストも務める。

11月23日には、今年9月にオープンしたばかりの高崎芸術劇場において、細川の《パッサージュ（通り路）》がアルディッティ弦楽四重奏団により世界初演される。高崎財団とケルン・フィルハーモニーの共同委嘱によるこの作品は、ケルン・フィルハーモニーからのリクエストにより、2020年のベートーヴェン生誕250年に因んで、ベートーヴェンの周辺の人々が彼と会話をするために使っていた会話帳からヒントを得て作曲されている（ドイツ初演は2020年の予定のため）。

タイトルの《パッサージュ》は、音楽をあの世とこの世、現実と夢を結ぶ「通り道」であると考える作曲家自身のアイデアから付けられたもの。細川と長年にわたり親交を結んできたアルディッティ弦楽四重奏団の演奏は、その「通り道」の先にどのような風景を見せてくれるのか楽しみだ。

11月には更に、細川の《レテの響き》の日本初演も行われる。《レテの響き》は、2017年にエマニュエル・パユ、ジャン＝ギアン・ケラス、エリック・ル・サージュと、Centro Nacional de Difusión Musical（マドリード）、ケルン・フィルハーモニー、ダニエル・バレンボイム財団、エルプフィルハーモニー・ハンブルクの共同委嘱によって作曲され、パユ、ケラス、ル・サージュのトリオにより、2018年1月にマドリードで世界初演されている。11月30日の王子ホールでの日本初演も、世界初演のトリオによる演奏となる。

細川俊夫
渦（2019）
オーケストラのための
Toshio Hosokawa: Uzu for orchestra
［世界初演］
抱擁―光と影―*（2017）
オルガンとオーケストラのための
Toshio Hosokawa: Umarmung―Licht und Schatten― for organ and orchestra
［日本初演］
クリスチャン・シュミット（オルガン）*、杉山洋一（指揮）、東京都交響楽団
サントリー芸術財団50周年記念 サントリーホール 作曲家の個展 II 2019 細川俊夫＆望月京
2019年11月28日［木］19:00　サントリーホール
https://www.suntory.co.jp/suntoryhall/schedule/detail/20191128_M_3.html

細川俊夫
パッサージュ（通り路）（2019）
弦楽四重奏のための
Toshio Hosokawa: Passage for string quartet
世界初演
アルディッティ弦楽四重奏団
2019年11月23日［土・祝］14:00　高崎芸術劇場
http://takasaki-foundation.or.jp/theatre/concert_detail.php?key=18

細川俊夫
レテの響き（2017）
フルート、チェロ、ピアノのための
Toshio Hosokawa: Klänge der Lethe for flute, violoncello and piano
日本初演
エマニュエル・パユ（フルート）、ジャン＝ギアン・ケラス（チェロ）、エリック・ル・サージュ（ピアノ）
2019年11月30日［土］17:00　王子ホール（東京）
https://www.ojihall.jp/concert/lineup/2019/20191130.html