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新刊楽譜:権代敦彦《無言のコラール集》ヴィオラとピアノのための

2022年 11月 30日付

権代敦彦/Atsuhiko Gondai

photo © Michiharu Okubo

権代敦彦作曲、ヴィオラとピアノのための《無言のコラール集》(2021-22)は、小山実稚恵による委嘱作品。アンコール曲としても演奏できるような短い「コラール」を書いてほしいという小山からのリクエストを受け、権代は人が集まること、声を合わせて歌うことが困難なコロナ禍におけるコラールの在り方を問い直し、心の中で歌う歌を「ヴィオラの『音』とピアノの『響』に託し」、5曲からなる曲集にまとめた。

「声に出したもの、言葉にしたものは自分からどんどん離れてゆくが、心の中で歌ったものは、どんどん身体に沁み込み、『神』と呼ばれるものも、声の彼方にではなく、心の奥底に見出すのかもしれない」という作曲家の思いが5曲に込められている。

権代は作品について、以下のように述べている。

最初のIでは時を一刻一刻、冷厳に刻み、次のIIでは宙空に向かって音を捧げ出し、IIIでその音は天から跳ね返り、地に恵となって降り注ぎ、IVで再び刻まれる音は、いつしか鐘の音へと変貌。弔鐘へと変わった時は、最後のVで直線的刻みを止め、始まるも終わりもない無時間的な円(マンダラ)を描く。

5曲の背後には、一つの通底する音のモチーフが見え隠れし、常に回帰する一つの中心音 ”Si=シ”、即ち「シ=死」の地平から、「生」を「今」を、見渡すような目線で書かれている。

2022年3月12日、埼玉・越谷のサンシティホールにて、I, II, IVが初演された後、6月19日に松本のザ・ハーモニーホールにおいて、川本嘉子のヴィオラ、小山実稚恵のピアノによって全曲初演された。

12月3日、第一生命ホールにて、同じく川本と小山により全曲が再演される。長らく共演を重ね、信頼し合う2人であるからこその、この作品のより深みを増した演奏に接する機会となるだろう。

小山実稚恵の室内楽 第6回
小山実稚恵&川本嘉子~ヴィオラ&ピアノ・デュオIII
2022年12月3日(土)14:00 第一生命ホール(東京)
https://www.triton-arts.net/ja/concert/2022/12/03/3686/
* 13:40~ 小山実稚恵、川本嘉子、権代敦彦によるプレトーク