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細川俊夫 ヴァイオリンとオーケストラのための《祈る人》世界初演

2023年 2月 28日付

細川俊夫/Toshio Hosokawa

photo © Kaz Ishikawa

3月2日、ベルリンのフィルハーモニーにて、細川俊夫の新作《祈る人》が樫本大進のヴァイオリン・ソロ、パーヴォ・ヤルヴィ指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団によって世界初演される。同管弦楽団、読売日本交響楽団、ルツェルン交響楽団の共同委嘱による作品で、初演者である樫本大進に捧げられている。

2020年から始まった新型コロナウイルスによるパンデミックがなかなか終結せず、2022年2月からはウクライナで戦争が始まり、世界が混迷を極めるなか、この作品は作曲された。2011年の東日本大震災以降、多くの祈りの音楽を書いてきた細川だが、自身の周りのいくつかの個人的な出来事も重なり、細川の祈りはますます深みを増している。作曲家による以下のコメントからも、彼が音楽に込めようとする祈りの深さを感じ取ることができるだろう。

私はかつてから、仏教の仏像を鑑賞するのを楽しみとしている。日本には寺院の中だけではなく、何でもない路傍にも、石や木の仏像が置いてあることがある。それらの多くは無名の彫刻家(仏師)によって彫られ、長い間、人々に大切に見守られ、保存され続けてきた。その仏像の「祈り」は、見えないところで、私たちを支えてくれているのではないだろうか。私の音楽作品も、この無名の彫刻家が生み出した仏像のような「祈り」を、持ったものにできないだろうか。

多くの細川の協奏曲と同様に、この作品においても、ソリストはシャーマンであり、オーケストラはシャーマンの内と外に拡がる宇宙、自然であると捉えられている。シャーマン(人)は力強い祈りの歌を紡ぐ。「シャーマンは、宇宙に向かって歌いかけ、それに対して宇宙は呼応したり反発したりする。その歌の交感のうちに、次第に祈りは深まり、ついにシャーマンは宇宙、自然と一体化していく。」

ウクライナでの戦争開始から1年を経た現在、細川の音楽による祈りがより多くの人々へと届けられることを期待したい。音楽に何ができるのか、作曲家は今も問い続けている。

ベルリンでの世界初演は、ベルリン・フィル・デジタル・コンサートホールでも配信される。その後、ルツェルン、東京での初演も予定されており、いずれもソリストは樫本が務める。

細川俊夫
《祈る人》(2022-23)
ヴァイオリンとオーケストラのための
Prayer for violin and orchestra
世界初演

樫本大進(ヴァイオリン)、パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
2023年3月2日(金)20:00/3月3日(金)20:00/3月4日(土)19:00
フィルハーモニー(ベルリン、ドイツ)
https://www.berliner-philharmoniker.de/en/concerts/calendar/details/54308/
ベルリン・フィル・デジタル・コンサートホール(配信)https://www.digitalconcerthall.com/ja/concert/54308