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アレクサンダー・ゲール逝去

2024年 11月 8日付

Alexander Goehr

photo © Tom Hurley

アレクサンダー・ゲールが93歳で永眠した。すぐれた作曲家にして指導者として知られたゲールは、イギリス内外の現代音楽に多大な影響を与えた。それは、作曲家としての重要な業績だけでなく、著名な作曲家として活躍する多くの教え子たちの存在からも伺い知ることができる。

ゲールは、指揮者であったヴァルター・ゲールの息子として、1932年8月10日にベルリンで生まれ、1933年にイギリスに移住した。王立マンチェスター音楽大学でリチャード・ホールに、またパリ音楽院でオリヴィエ・メシアンとイヴォンヌ・ロリオに師事。マンチェスターでのゲールは、大陸のモダニズムによる最新の音楽とイギリスの仲間たちとの橋渡し役となり、ハリソン・バートウィスル、ピーター・マクスウェル・デイヴィス、ジョン・オグドンらと共に「マンチェスター楽派」を結成した。1960年代始めにはBBCに勤務し、ミュージック・シアター・アンサンブルを設立。これは、彼の確立した音楽形式を演奏するために結成された最初のアンサンブルであった。1960年代の終わりからは、ボストンのニューイングランド音楽院、イェール大学、次いでリーズ大学で教鞭を取り、1975年にケンブリッジ大学の教授に就任、亡くなるまで名誉教授を務めた。また中国でも教鞭を取り、タングルウッド音楽祭のコンポーザー・イン・レジデンスを2回務めた。

ゲールがケンブリッジに赴任した年は、彼の創作の転機、すなわち《Psalm IV》(1976年)のホワイト・ノートによる作曲と重なった。この作品のシンプルで明るい旋法の響きは、戦後のセリエリズムからの脱却と同時に、より平明な音響世界への傾倒を示すものだった。ゲールは独自の旋法的な和声語法と、長い間廃れていた通奏低音の実践を融合させることによって、和声の歩みをコントロールする方法を見いだし、過去と現在の極めて特異な融合を成し遂げたのである。続く数年間に発表された作品には、この新しい語法を使って、すでに彼の作品を特徴づけていたアイデアやジャンルの探求を押し進めようとするゲールの意思が表れている。

ゲールのオーケストラ作品には、4つの交響曲、ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロといった楽器のための協奏曲、室内楽、弦楽合奏、吹奏楽のための作品、アンサンブル作品がある。また、彼は5つのオペラ、多くの大規模な声楽作品、すぐれた室内楽作品を書いた。ゲールはオリヴァー・ナッセンと特に近しい協力関係にあり、ナッセンはゲールの《... a musical offering (J. S. B. 1985)...》(1985年)、《Idées Fixes》(1997年)、テノール、児童合唱、アンサンブルのための《To These Dark Steps/The Fathers Are Watching》(2011-12年)など、多くの作品の録音と初演を行った。他にも世界一流のオーケストラ、ソリスト、指揮者たちとの交流から多くの作品が生み出された。チェロ協奏曲《Romanza》(1968年)はジャクリーヌ・デュ・プレとダニエル・バレンボイムのために作曲、《Metamorphosis/Dance》(1973-74年)はベルナルト・ハイティンクとロンドン・フィルハーモニー管弦楽団によって初演、《Colossos or Panic》(1991-92年)は小澤征爾とボストン交響楽団によって初演、そして《Two Sarabandes》(2014年)はバンベルク交響楽団により委嘱、ラハフ・シャニの指揮によって初演された。

室内楽作品を通して、ゲールは新しいリズムとハーモニーの即時性を獲得したが、一方で、その音楽はつねに他の時代や場所の音楽やイメージを含んでいた。ピーター・ゼルキンとロンドン・シンフォニエッタのために書かれた《カルカッソンヌへの行進》(2003年)は、新古典主義とストラヴィンスキーにさりげなく触れている。ピアノ・ソロ作品集である《Symmetries Disorder Reach》(2002年)はバロック組曲に見せかけた作品で、ヒュー・ワトキンスによって初演された。また、シャロウン・アンサンブル・ベルリンのために書かれた《...between the lines...》(2013年)はシェーンベルクとシューベルトの系譜をたどっており、打楽器奏者、コリン・カリーとパヴェル・ハース四重奏団のために書かれた《Since Brass, nor Stone...》(2008年)はシェイクスピアに触発された作品で、2009年の英国作曲家賞の室内楽部門を受賞した。

ゲールの仕事と新しい音楽への取り組みは生前から数々の権威ある団体に認められていた。アメリカ芸術文学アカデミーの名誉会員であり、チャーチル・フェローでもあったゲールは、その生涯にわたる音楽文化への貢献が認められ、2019年にロイヤル・フィルハーモニック協会の名誉会員となった。ゲールの手稿譜はベルリン芸術アカデミーによって保管・管理され、今後、作曲を学ぶ学生や研究者が利用できるようになるだろう。

作曲家、音楽学者にしてゲールの教え子でもあったジャック・ヴァン・ザントとの共著、『Composing a Life』が2023年10月にCarcanet Pressから出版され、これを記念して、ゲールの晩年の作品のひとつ、弦楽四重奏のための《Ondering》(2023年)が王立ノーザン音楽大学にてヴィリアーズ四重奏団によって初演された。

クラリネット独奏のための《Seven Laments》が2024年10月のランゲンゼルボルト・クラシック音楽祭にてイブ・ハウスマンによって世界初演、また、《Sinfonia》(1979年)が2025年3月にリヴァプールにてジェフリー・パターソン指揮のもとアンサンブル10:10によって演奏される予定である

サンディ(彼の親しい人たちによる愛称)は2024年8月26日にケンブリッジシャーの自宅で息を引き取った。

Christopher Peter
Alexander Goehr (1932 – 2024) (schott-music.com)より翻訳)

アレクサンダー・ゲール氏のご冥福を心よりお祈りします。